大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 昭和25年(行モ)2号 決定

申請人 横井次郎 外三名

被申請人 徳島県知事

一、主  文

被申請人の別紙目録記載物件收去に関する代執行処分はこれを停止する。

申請費用は被申請人の負担とする。

二、申請の趣旨

主文同旨

三、事実及び理由

申請代理人は、その理由とするところは「別紙目録記載物件は申請人等の各所有に属するところ、沢谷村農地委員会又は徳島縣農地委員会はこれを未墾地買收計画に組入れ、被申請人は自作農創設特別措置法第三十三條により申請人に対し地上物件收去命令を発するとゝもに昭和二十五年四月十一日附代執行処分を爲した。然しながら右の処分は次の理由によつて違法である。即ち申請人等は前記買收計画に対し前記両委員会及び徳島縣知事を相手方として当廳に対し取消訴訟を提起し、現に昭和二十三年(行)第四四号、昭和二十四年(行)第四号、同年(行)第五号各事件として係属中であるが、右買收計画の違法であることは右各訴状並に本件疎明書類によつて明かである。申請人等は本件山林の植付手入等に從來多額の経費を投入し今やその自然生長を待つだけとなつているにもかゝはらず現在これを伐採するときは国家経済の見地からも漠大な損害であるにもかゝはらず被申請人が本件処分を本案判決後に遅延することによつて受ける損害は僅少である。又本件山林は那賀川の上流に位置しその水源地帶を爲していてこれを伐採し開墾地とすることは治山治水の関係で重大な害惡を生じ償ふことのできない損害を與えるものである。次に前記買收処分は昭和二十四年一月十八日農林次官通牒「開墾適地選定基準に関する件」の主旨に反し開墾不適地を買收し申請人等の所有権を侵害するものであつて買收権の濫用であり、公共の福祉に反すること明かであるに反し申請人等の植林事業は国家の造林政策に沿ひ充分保護に値するものであつて、本件処分を停止することは公共の福祉に重大な影響あるものではない。」というにあり被申請人は「本件申請を棄却する」との決定を求め、その意見としては「本件土地は沢谷村農地委員会並びに徳島縣農地委員会の未墾地買收計画により昭和二十三年十月二日及び同年十二月二日を買收の時期としてそれぞれ計画は確定しているが、沢谷村開拓計画は昭和二十四年一月より実施し農林省開拓課の認可を得て五箇年計画をもつて開拓事業による村の再建を企図し、これに伴う建設工事は進捗しているにもかゝはらず買收地上物件の收去についてあらゆる手段を盡して勧告したが從來立木の收去が出來ないので開墾作業は進捗せず開墾計画に大なる支障を來すに至つたので止むなく昭和二十四年度末に第一回の代執行を実施したがこの面積は昭和二十四年度の開墾計画地の一部に過ぎず昭和二十四年度は大部分が開墾未完了に陷り今回の代執行の地域も前年度の開墾計画地域である。又入植者は入種適格証を受け開拓地も指定されていながら多くは開墾作業に着手出來ず待機している有様でありこれらの立木の收去が適切に行はれなければ村民を不安に陷し入れこのまゝ推移すれば開拓計画遂行上に一大支障を來すものと認められる。

本代執行令書を出すまでには沢谷村農地委員会より再三收去を依頼すると共に開拓事業に協力方を墾請したが應じないので昭和二十四年九月二十一日自作農創設特別措置法第三十三條の規定により收去を命ずると共に不採算林については政府に買收申請の途のあることを知らせたが何等の意思表示もなく收去期限を経過するも收去しないので昭和二十五年二月十六日付を以て戒告書受領の日より三十日以内に收去しないときは代執行する旨戒告書を送付せしもこれ又期限経過するも收去しないので昭和二十五年四月十一日付代執行令書を送付してやむなく代執行を実施するに至つたものである。

代執行の地域は買收地の一部分であり前年度の開墾計画地であつて勿論開発適地であるから立木の收去は急を要する以上の如く代執行地域は開墾計画上止むを得ざる必要限度の面積に限定してあるので申請人の主張のようなことはないと認める。

なお開拓適地選定基準は本件土地買收計画樹立以後即ち昭和二十四年一月十八日付農林次官名で通牒されたものであつてこの基準の適用はない。

しかし傾斜度について例外容認及び特別容認を得ているのでこの基準に抵触することはない。又申証人は本執行処分が現下国情に照し喫緊事では絶対にないとの見解は誤りも甚しい我国の食糧需給事情、農山村の恐慌に備へて農地改革の一環として未墾地開発計画を強力に推進すべきである。これがため立木の收去は緊急を要するものである。」というにある。

よつて本件申請の当否につき考へるに、申請代理人提出の各疎明資料によれば申請人等の主張は一應理由ありと認められるから行政事件訴訟特例法第十條民事訴訟法第八十九條を適用し主文の通り決定する。

(裁判官 今谷健一 赤塔政夫 三木光一)

(目録省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!